【タイトル】

全校昼会の話10.2 目黒の秋刀魚

【本文】

 「目黒のサンマ」と言う落語のお話があります。  昔の身分の高い方は、庶民の生活を知りません。  のどかなある秋の日のこと。お殿様が家来を連れて、目黒のお不動様のお参りに出かけました。目黒に着かれたのはお昼近くのことで、近くの農家からサンマを焼く、よいにおいが漂っております。お殿様はそれがサンマを焼くにおいだと知ると、「自分もぜひサンマというものを食べてみたい」と家来に命じました。  さあ困ったのは家来たちです。「サンマとは下魚(げざかな)でございますゆえ、お殿様のお口に入りますような魚ではございません」と言ったものの、お殿様の言いつけではしかたがない。農家のおじいさんに頼んで、焼いたサンマを譲ってもらうことにした。  生まれてはじめて食べたサンマを、お殿様はすっかり気に入られた。お腹が空いていたこともあって、忘れられない味になった。ところが屋敷に帰っても、食卓にサンマが出ることはない。         お殿様は、寝ても覚めてもサンマが食べたい、サンマが食べたいと思っていたある日のこと。親戚のおよばれでお出掛けになりますと「なにかお好みのお料理はございませんでしょうか。なんなりとお申し付けください」というご家老の申し出に、お殿様はすかさずサンマを注文した。                 ご家老は驚いて、日本橋魚河岸から最上級のサンマをとり寄せたが、このように脂が多いものをさし上げて、もしもお殿様のお体の具合が悪くなったら一大事と考え、十分に蒸したうえ、小骨を丁寧に抜いて、だしがらの様になった秋刀魚を出した。 「なに、これがサンマと申すか。間違いではないのか、たしか、もっと黒く焦げておったはずだが・・」  脂が抜けてぱさぱさのサンマがおいしいはずがありません。                             「このサンマ、どこから取り寄せたのじゃ?」 「日本橋魚河岸にございます」 「それはいかん。サンマは目黒にかぎる」   というお話です。  2008年、今から15年ぐらい前は、30万トン以上も取れたサンマが、ここ数年は2万トンぐらいしか取れません。その原因はよくわかっていませんが、海水温の上昇とか外国の漁船の影響ではないかと言う人もいます。昔から庶民の食べ物だったサンマが、マグロと変わらないぐらい値段が高くなっていました。そのサンマが今年はたくさん取れていて、去年より安く買うことができるということです。  サンマに限らず、秋は食べものがおいしくなる季節です。給食をおいしく、残さずいただくようにしましょう。             校長 景山 賢治


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